QSE

概要

“量子の力”を、未来を拓く力に。
人間社会のより豊かで持続可能な発展につなげる。

  • 核融合炉の開発
  • 原子力発電所等の大規模システムの安全性の向上
  • 医療や環境分野への放射線の高度利用
  • 原子燃料サイクルの高度化
  • 福島第一原子力発電所事故からの復興
  • 放射性廃棄物の処理処分技術の高度化と環境影響評価
  • 保全工学の高度化

社会や暮らしの安全・安心、利便性や快適性、豊かさ、楽しさの多くは、日進月歩の科学技術によってもたらされています。経済産業の発展を支え、多様な価値を生み出し、生活に影響を与える科学技術の中でも、電子・原子核・原子といったミクロな物理現象を扱う量子サイエンスは、現代科学の“礎”となっているといっても過言ではありません。私たちは20世紀初頭から始まった量子の世界への探究と理解を通じて、これまで多くの謎を解き明かし、その過程で様々な知識と知見を得てきました。

量子エネルギーの身近な工学的応用として、エネルギー、医療、環境分野などへの展開がありますが、非常によく知られているものに原子核反応を利用・制御して熱エネルギーを取り出す核分裂炉や、未来のエネルギーとして現在、国際協力によって研究と実験が重ねられている核融合炉があります。

エネルギー自給率わずか8%といわれ、資源の多くを海外に依存する日本においては、エネルギーセキュリティの保持、つまり必要十分なエネルギーを適正な価格で継続かつ安定的に確保していくことが大きな課題となっています。そのためにも原子力エネルギーと、持続可能性をかなえる原子燃料サイクルを欠くことはできないと私たちは考えています。さらに、温室効果ガスの削減や化石燃料依存からの脱却に向けて、運転時にCO2を排出しない原子力エネルギーは、再生可能エネルギーとともに、電源の安定供給において重要な役割を果たします。

しかし、安全に安定的に原子力エネルギーを利用していくためには、福島第一原子力発電所のような事故を二度と、決して引き起こさないことが前提となります。半世紀以上、量子エネルギー工学の研究・教育に取り組み、原子力分野へ多くの人的資源を輩出してきた私たちは、研究者として教育者として、まっすぐ今回の事故と向き合い、その検証と反省を、新しい研究テーマや教育システムに反映させています。福島第一の事故を引き起こした要因のひとつとして「全体像を俯瞰する視点の欠如」が挙げられています。私たちは、放射線や放射能、原子炉等の高度専門知識に加えて、広い視野と高い倫理観を備え、さらには社会に向けて説明責任が果たせるような、深い思考力とコミュニケーション能力を持つ人材の養成を始動させています。

福島第一の復興はまだ道半ばです。今こそ、原子力に関する高度な技術と見識を備え、将来を展望する力のある人材が求められています。私たちが果たすべき教育的役割と責務はとても大きいものがあります。他方、核融合や医療・環境分野への応用など、時代や社会からの新しい要請に応える量子エネルギー工学の発展・進化にも注目と期待が集まっています。“量子の力”を、未来を拓く力に――新しい科学技術の創出を目指す私たちの合言葉です。

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